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薬局製剤・調剤実習

煎じ薬、丸剤、軟膏剤などを実際に作ってみましょう!

2018(平成30)年度 漢方薬局製剤実習講座が開催されました!
2018年7月15日(日)10:00〜17:00 慶応義塾大学・芝共立キャンパスにて開催されました。
薬剤師の方、登録販売員の方を始め、薬学部学生の方など、総勢103名の多数の皆様のご参加をいただきました。
今回取り上げた処方は…【散剤】安中散  【茶剤】安中散料です。

<法令とオリエンテーション>
慶應義塾大学薬学部 小林先生からのご挨拶 薬局製剤の歴史と法規:三上副会長 実習のポイント:八木学術委員
 
昼前から各班のプラッテ(実験台)に分かれて、昼食をはさんで実習です。
各班リーダー、サブリーダーの指導監督のもと、楽しみながら、かつ真剣に製剤実習を行いました。

<散剤:安中散(あんちゅうさん)>
体力中等度以下で、腹部に力なく、胃痛または腹痛があってときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、はきけ、嘔吐などを伴うものの神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱の症状に適用される処方で、宋代の「和剤局方」を原典とし、わが国では19世紀江戸時代以降に頻用される処方です。

日本における安中散の処方は、浅田宗伯先生著「勿誤薬室方函口訣」(ふつごやくしつほうかんくけつ)巻上 煎剤部の処方に基づいており、ケイヒ・エンゴサク・ボレイ・ウイキョウ・シュクシャ・カンゾウ・リョウキョウの7味からなり、温剤・気剤に分類される生薬が多用されています。
本実習では山田光胤先生著「漢方処方 応用の実際」に基づき、生薬の分量を規定いたしました。
散剤では水溶性成分だけでなく脂溶性成分、揮発性の成分も余すところなく服用できます。また貯蔵や携帯が簡便で、用時にすぐに服用できる等の利点もあります。
1) 生薬の検査、不適部位の除去
原料生薬の品質は製剤の品質に直結します。におい、味について実際に生薬を口にして確認します。また夾雑物や変色した生薬などがあればこの段階で除去します。
2) 秤取(ひょうしゅ)
前述の7味の生薬を規定量ずつ秤取し、粉砕機へ移します。
3) 粉砕
粉砕時の熱で生薬が変性しないように間欠的に粉砕します。動作後の粉砕機はしばらく冷やしてから開けます。すぐ開けると生薬末が舞い上がり、収量が落ちます。氷水で冷やしたタオルや保冷剤を巻いて冷却を促進するのも有効です。
4) 篩過(しか)
#100の細かい篩を全量通るまで篩過します。清潔な手やゴム箆を使いますが、叩いたり押し付けたりしてはいけません。篩に残った粗い部分(篩過残)は粉砕機に戻して粉砕しなおし、再度篩過します。
5) 混和・収量測定
前の工程では粉砕されやすい生薬から篩過されて不均一になっていますので、#36の粗めの篩を通し、各生薬を均一に混和します。なおカンゾウは実習時間内に微細粉末を得ることが難しいため今回はカンゾウ末をこの段階で混和しました。
混和物を秤量し、収量を確認します。
6) 分包
1人あたり18gを秤取し、これを1包2gずつ9包(3日分)に均等に分け、シールします。分包機を使えば機械任せで簡単な工程ですが、今回は手作業です。
7) 重量偏差試験
分包散剤は、重量偏差試験に適合しなければなりません(薬局製剤指針の規定)。20包の平均重量を求め、個々の偏差がその10%以下であれば適合とします。
8) 記録
製造記録書に、製造管理に関する事項、および試験結果を記録します。
製造記録書は3年間、販売記録は2年間の保管が義務付けられています。
9) 薬研による製剤体験
簡便な粉砕機等が普及する以前はこうして粉末を得ていました。その大変さを全員に実感していただきました。
 
<茶剤:安中散料(あんちゅうさんりょう)>
「漢方処方 応用の実際」では、「元来は散剤であるが、今一般に煎剤で用いる」との記載があり、本剤においては茶剤である「安中散料」の剤形も重要であると考えています。 粉砕・篩過工程を要しないため製剤が簡便であること、また煎じるときの香りにも効果が期待でき、煎じるという行為が治療意欲を向上させるという副次的効果も期待できることなどが茶剤の長所です。
1) 秤取
1日分ごとに原料生薬を秤取します。今回は3日分を製剤しました。
2) 秤取した生薬を舟へ置くとき、前の生薬に重ねないように、また作業者からみて遠い方の舟から置きます。生薬の入れ忘れを防止し、違う舟にこぼしたときの回収を容易にするためです。 3) 分包
和紙袋へ移し、上部をヒートシールで封します。あまりピッタリで封すると、煎じたとき生薬が膨潤して袋が破れるおそれがあるので、若干の余裕をもった位置をシールします。
4) 文書等の整備
ラベル、添付文書、製造記録書を作成します。添付文書の「使用上の注意」などの情報提供が法規に沿っていなければなりません。
さらに「かかりつけ薬局」としての存在価値向上のために、製剤の作用や煎じ方の手順、煎液の保存方法などの解りやすく丁寧なガイドも用意すると良いでしょう。
5) 生薬ミニレクチャー
学術委員から今回の原料生薬について講義がありました。講義テーブルでは茶剤も煎じ、試飲も行いました。
6) (参考)ウイキョウ
安中散および安中散料の構成生薬のひとつ、ウイキョウ(セリ科)の複散形花序です。
 

<おわりに>
今回は「安中散」の構成生薬で、剤形の異なる2つの製剤を実習しました。
剤形の違いによる工程や服用感の違いを印象的に実感できたことと思います。
異なる剤形の処方を使い分けられることは薬局製剤の利点であり、散剤にあっては微細で均一な粉末を調製できる手腕が問われます。

「薬局製剤指針」には、具体的な製造方法は載っていませんが、実践するには、実践向きの方法論が不可欠です。
この実習でお伝えしている方法論・知見・ノウハウは、当協会の薬局製剤分科会における研究と試行錯誤の上、確立されたものであり、他に類を見ない有意義なものです。
実習を受講された皆さんが、各自の創意工夫を取り入れて、薬局製剤の発展に寄与されることを願っております。

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